森井 高広

面粗さナノレベルのレンズは、
いかにして生まれるのか

カメラのレンズには「球面レンズ」と「非球面レンズ」の2種類があり、それぞれで加工方法が大きく異なります。球面レンズは、レンズの球をちょうど反転させた形状の工具とガラスを摺り合わせることで、最初はザラザラしている面を細かく整えながら、最終的にナノレベルの面粗さに仕上がるように段階を踏んで磨いていきます(山本)。

レンズ一枚一枚を研磨する球面レンズとは違い、非球面レンズは金型でガラスをプレスして、レンズを成形するという方式で作られます。金型は形状が複雑なため、社内で開発した測定器で精密に測りながら磨いていくのですが、最新の技術では非球面レンズもナノレベルの面粗さを実現できるようになりました(森井)。

森井 高広
山本 和也 山本 和也

球面レンズと非球面レンズ、
その加工の難しさ

ご説明したように、球面レンズは段階的に磨いていくため、それぞれの段階ごとにどんな条件でどんな工具を使うのか、場合によっては、どんな工具を作るのか、その選定が仕上がりの精度を大きく左右します。また、レンズの材料となるガラス材は400種類ほどあり、硬いもの、軟らかいもの、溶け易いもの、溶け難いものと、その特性は様々です。設計者はそれらの中から最適なガラス材を選ぶのですが、PROシリーズのようなハイエンドなレンズになればなるほど、使用するガラス材も加工しづらいものになります。

硬くて磨きにくい「高屈折率・低分散ガラス」から、非常に軟らかくて水に浸けておくと表面成分が溶け出す「ED(特殊低分散)ガラス」まで、極端に特性の異なる素材に対して、そのすべてに満足のいく品質を実現することも球面レンズを作る上での難しさですね(山本)。

森井 高広

非球面レンズはガラスをプレスして成形する金型の加工技術が精度の高いレンズを生み出すキーになります。

当然、金型にはレンズよりも一段上の精度が求められるのですが、素材が非常に硬くて加工性が良くないため、いかに加工精度と生産性を両立するかが大きな課題となります。

加えて、微小な工具を非球面形状に沿って動かしてその軌跡で形状を作り出していくため、表面に凹凸が出来やすく、面粗さをナノレベルに仕上げるのは球面レンズ以上に難易度が高いです(森井)。

森井 高広
球面レンズ 非球面レンズ 球面レンズ 非球面レンズ

継承される匠の技

EDレンズやスーパーEDレンズなどの特殊光学ガラスの加工では、社内の高度技能者※が顕微鏡事業で培ってきた加工技術を標準化することで、高精度なレンズの生産を実現しました。
非球面レンズの開発においても、そうした匠の技が様々な場面で活かされています。たとえば、金型の製造には独自に編み出した工具の動き方やスピードを高精度にコントロールできる加工機を使用しているのですが、その開発には顕微鏡や内視鏡分野で培ってきた幅広い技術力と、優れた技能を持った職人のノウハウを引き出して数値化する取り組みが不可欠でした。それら技能の継承がなければ、おそらくこれほどの短期間で面粗さナノレベルのレンズを製品化することはできなかったと思います。我々、生産技術者は高技能者が持つ匠の技を常に追いかけ、その最先端の技術を量産品へと落とし込むことで、今後も多くのお客様にとって魅力的なカメラ用レンズを生み出していきたいと考えています(山本・森井)。

※オリンパスには高い技能を育成・評価する仕組みと風土があり、社内制度で延べ195名が高度技能者として認定されている。また、厚生労働省が認定する「現代の名工」には10名が認定、内閣府で審査、閣議決定される黄綬褒章(農業、商業、工業等の業務に精励し、他の模範となるような技術や事績を有する方)には3名が認定されている。

01.先進の技術と匠の技から生まれた「M.ZUIKO PRO」シリーズ01.先進の技術と匠の技から生まれた「M.ZUIKO PRO」シリーズ